第22章 『衝動』
「はぁぁぁぁ…………」
ある程度走ったところで立ち止まり壁にもたれ掛かると。疲労感たっぷりの溜め息を盛大に吐く。
ーーーあー……厄介な女達だ……
現代でもああいうのが常に居た。
こんな風体であるが故、私に男らしさを感じてキャーキャーと崇めてくる奴等が……。
酷かったのが中学・高校時代。
例えば体育の時間ーーーバスケでゴールを決めりゃあ女子達から割れんばかりの黄色い声援が巻き起こり。
試験で高得点を取れば瞳を煌めかせて賞賛され、勉強を教えてくれと群がってくる。
部活中は怒涛の数の差し入れを渡され、
バレンタインに至っては机にチョコレートの山。
あまつさえファンクラブまで結成する始末ーーー。
「女に好かれたって嬉しくないっつーの………」
ちっ、と舌打ちをすると。
気怠げに前髪を掻き上げながら、項垂れていた身を起こして通路を歩き出す。
ーーーそういう女の心理はいまいち理解し難い。
男を追っ掛けてる方が断然有意義じゃんか。
性欲処理出来るし、キモチイイし。
恋人として付き合うのは勘弁だけどね。そんな恋愛ごっこは正直面倒臭い。
やりたい時にパッとやる、これで充分。
ま、そうやって奔放に行動していたせいで一部の女達からは蔑まれてたけど………
微塵も気にしちゃいないさ。
私は自由にやりたいことをやってるだけなんだからーーー。
「確か、ここが書庫だよね………」
うろ覚えの記憶を頼って行き着いた部屋の前。
さあ、とっとと掃除してしまおう……と一歩踏み出し、やや古めかしい引戸をガラガラと開くと。
瞬間、ひとりの男の姿が目に飛び込んできた。
深みのある濃い紫の着物に白地の羽織を纏い、ジッと座って読書をしているーーー
石田三成、だ。