第22章 『衝動』
襖を開くと。
上座にどっしりと構えている織田をはじめ
両脇には武将達が並んで座していてーーー
そのなかに徳川の姿を捉えた小梅は、明智の肩から降りるや否や喜び勇んで駆け出していく。
「家康ぅぅぅ!!会いたかったぁぁぁ!!」
「小梅様、どうぞこちらへ」とにこやかに微笑む石田が手を指す先は、徳川の隣の空席。
気を利かせたつもりらしいが………
徳川本人は、余計なことをするなとでも言いたげな瞳でじっとりと睨みつけている。
「行き違いになっちゃったね……寂しかったでしょ?」
「全然。出来ればずっと行き違ってて欲しいんだけど」
「またまたぁ〜、寂しかった癖に〜。照れ屋さんだねっ」
「………。都合良く分析するのやめてくれる?ほんと朝から疲れる」
冷たい言葉を浴びせられてもなんのその。
会えて嬉しいのか、素早く席に着いた小梅はきゃっきゃとはしゃいで話し掛けていて……
横では為す術無く徳川が頭を抱えてる。
不憫な男だな。でもちょっと面白い。
「おい、ここ座れよ」
・・・・・
声が掛かりそちらを見やると、
つい数時間前まで一緒に寝ていた男がそこにいた。
黒い眼帯と、こなれた着こなしの紺碧衣。
くいっと顎を使って自身の隣席を指していてーーー
誰の隣であろうと席なんてどこでもいいや、と私は招かれるがままそこへ腰を下ろす。
「………どーも。」
「早起きなんだな、お前って」
「まぁ、ね」
平然を装い、一言二言交わす。
何も知らない周りの者からしてみれば、自然な会話に聞こえるだろう。
すると、伊達の反対隣に位置する明智が不意に疑問を投げ掛けてきた。
「政宗、その唇の傷はどうした?」
「これか?あー……
獰猛な獣にちょっとばかりやられちまってな」
「照月か」
「まぁ、そういうことだ」
伊達は一瞬だけ横目をこちらにやってニヤリとすると、また明智の方へ向き直す。
よく言うよ、獣はあんたの方でしょーが。
………っつーか“しょうげつ”って何だ?
酒の名前みたいだな、と首を捻る。
ーーー程なくして、
皆が勢揃いした広間では
ようやく朝餉の時間が始まった。