第22章 『衝動』
姉を先頭に通路を歩く。
綺麗に着物を着こなした後ろ姿ーーー
すっかり戦国時代が板についてるようだ。
外界に面した障子からは朝日が燦々と差し込んできていて、床から足裏へ暖さが伝わる。
いつも朝はコーヒーと煙草で済ませていたので、朝食は要らないと言ったのだが姉曰く朝はきちんと食べなきゃ身体が保たないよ、とのこと。
そこらの女よりは体力あるし食べなくったって困らないんだけど。大人になってからも昔のように世話を焼かれて少し煩わしさを感じながらも、渋々従ってしまうのは妹の性………というやつだろうか。
いや、たぶんそれは純粋に姉を慕っているからでーーー
「ん………?」
途中、通路の奥から人影が現れ……
よく見てみると。
背の高い男ーーー明智光秀がこちらに向かってやって来る。
そしてその肩に担がれている小さな女は、先に部屋を出たはずの小梅だった。
「おはようございます光秀さん!小梅に何かあったんですか?」
「特別何があった訳でも無いが……ただ座敷童子がふらふらと城内を彷徨っていたのでな。捕獲しておいた」
姉に問われニヒルに笑う明智の顔の横には「家康がいないの……家康どこ……」とブツブツ呟き項垂れている座敷童子。
どうやら……
ひと足先に広間へ行ったものの徳川はまだ席に居らず、待ちきれなくなり………一秒でも早く彼に会いたいが故にあちこち捜索していたそうだ。
大人しく座って待ってりゃそのうち来るっつーのに。なんという執念。
「しっかし座敷童子ねぇ…………ぷっ」
ウェーブはかかっているが肩の位置で切り揃えられた髪、低身長、童顔の小梅が着物まで着てればそりゃあもう、ね。
しっくりくるネーミングだな……なんて吹き出しつつ、四人でぞろぞろと廊下を進んでいきーーー
ようやく広間へと到着した。