第22章 『衝動』
織田が椀を手に取り汁物を啜る。それを確認したあと、姉を含め他の武将達は各々箸を持ち食事を開始した。
まずは上の者から、という礼儀は当然のこと。全員皆、姿勢や食べる所作は品があり洗練されていて。
現代にいた周囲の男共とはえらい違いだな………と、思わず目を見張ってしまう。
そうしているとーーー
あのやたら風紀に五月蝿い男と偶然視線がかち合った。
「…………」
その糞真面目で真っ直ぐな瞳に見つめられると、やはり何故だか心苦しくなって私はサッと顔を逸らした。
理由は自分でも分からない。
無理矢理別のことを考えるようにして、膳の上の料理を淡々と平らげていく。
ーーー静かに黙々と食べる者、談笑する者などそれぞれが自由に振る舞う和やかな朝餉風景ーーー。
そんな折、信長がふっと手を止める。
「時に蓮、小梅。貴様等の今後についてだが……
元の世へ帰還する見通しがつくまでは思いのまま自由に過ごすが良い。着飾るなり出掛けて遊ぶなり好きにしろ」
「言われなくても自由にするつもり。
でも………その代わりここで働かせて貰う」
「働く?不躾な貴様も気遣いという精神は持ち合わせているようだな」
「ーーー見当違いもいいとこ。悪いけど気遣いなんてしないから。ただあんたに借りを作りたくないだけ」
「ふ……偏屈な女だ」
昨夜の深酒もどこ吹く風。
敵意を滲ませ噛み付く蓮と、
殺伐としたやり取りを愉しむかのような信長ーーー
やれやれまたか………そんな空気が漂うなか。
見兼ねた秀吉が蓮を咎めようとするも、甲高い声に遮られる。