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【イケメン戦国】戦国舞花録

第21章 『勝敗』 ※R-18





「一晩考えたが……やはり女相手に言い過ぎた」

「え…………」




“百合が可哀想だ”

“お前みたいな女が妹なんて”




「部屋にも居ないし……思い詰めてるんじゃないか、ってな」


・・・・・

そういえばさっき少しだけ呼吸が荒かった。
朝から城中を探し回ったんだろうか。
昨夜の台詞を気にしてーーー


「信長様を陥れるなど絶対に許されるべきことじゃない……しかし……
家族を想うお前の気持ちも分かる」

「…………」

「その逆も然り。家族もお前を想ってるはずだ。
だから……自分の身体をもっと大事にしろ。軽はずみに誘惑したり復讐の手段に使うな」


眉間には溝が薄っすらと刻まれていて、怒りの表情ーーーけれど。
心配しているような、悲しんでいるような……言葉に嘘偽りは無いことを伺わせる、真っ直ぐな瞳。

陽だまりのなか、
未だゆるやかに流れる穏やかな風は、まるでこの男の心のようだーーー


「……余計なお世話!」


不可解な居心地の悪さを覚えた蓮はぶら下げていた手拭いをギュッと握り締め、玄関口へと駆け出していき………

秀吉は、その後ろ姿を無言で見つめていた。

















「蓮!どこ行ってたの?もうすぐ朝餉の時間だよ」


部屋に戻ると、身支度を整えた姉貴がそわそわと待機していて。
小梅は恐らく……徳川の隣の席を早々に確保する為であろう、既にそこには居なかった。

はいはい、分かったよ、と気怠げに返事をしながら手拭いを無造作に放り投げ、汗まみれのTシャツを新しいものに替えていたら。


「………蓮、なにか良いことでもあった?」

「は?なんで」

「んー、なんとなく。今日はご機嫌だなぁ、って。
そんな顔してる」

「……別になんも、ないよ」


ーーー良いことなんて何も無い。

ただ………
何故だか気分はすっきりと、悪くない。

そんな、気持ちだ。



昨夜、涙と共に抱いた胸中の霧が
あの穏やかな吹きゆく風によって晴れていくのを感じーーー簡単に着替えを済ませると、姉と二人で広間へ向かった。



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