第21章 『勝敗』 ※R-18
「ん………っ」
部屋へ踏み入れるや否やーーー
閉戸すると同時に、
火が付いたように唇を貪り合い………
互いに背中を掻き抱いて、
上半身を密着させ前のめりで相手の口内に攻め入る。
その隙間から漏れて顔にぶつかる吐息は熱く、
二つの舌が奏でる水温と共に空気中へ流れ出ていくーーー
「……っ、は……あ」
息も絶え絶えになり
一旦 舌を解いて少し離れると
ツ………、と透明な糸が引き伸びてーーー
間もなく、途切れた。
「…ふぅん…。あんた…結構遊んでるでしょ」
「はっ……人聞き悪いな。
欲しい時に欲しいものを愛でているだけだ」
伊達は口元だけで笑みを作ると、
ぐっと私の顎を持ち上げ
濡れた唇を食みーーー舌を絡め取っていく。
尖らせた先を使って
舌の側面や裏側をなぞる、巧妙な動き。
背中を支えていた片方の手は
肌伝いに下降すると……
腰と殿部を愛撫するように這い回っていて。
その感覚に、
ゾクゾクと毛が逆立ち興奮が誘発されるーーー。
「ん、んん……ふっ、あ……」
ーーーああ、
もうこれだけで身体の中心が疼いてしまいそうになる・・・・・
この舌使いで、
この手捌きで、
どれ程の女達を屈服させてきたのだろうーーー
「………」
閉じていた目をバッと見開き、
奴の舌から無理矢理逃れた私は
目の前にある着物の衿を思い切り左右に引っ張った。
すっかり緩んだそこから覗くのは、逞しく厚い胸板ーーー。
「なんだ、次は……お前が攻める番か?
ーーーお手並み拝見、だな。来いよ」
ふっ、とまた小憎らしい余裕な表情で伊達はそばにある褥へ腰を下ろす。
促された私は
ひとつ間を置いたあと………
その正面に座り、相手を静かに見据えた。
ーーー忠告しておくけど、
平常心を保っていられるのは今のうちだけだから。
掻き乱して、
搾り取って、
そんな余裕はーーー
「殺してあげる……」
伊達の耳元に顔を寄せそう囁くと、
腰に巻いてある帯に手をそっと添え……
結び目に、指を掛けた。