第21章 『勝敗』 ※R-18
「……!」
ガリ、と下唇に歯を立てられる感触と
口内に広がった鉄の味ーーー
蓮の肩を押し退け、
滲み出る血を拭った政宗は
なんて女だ、と思いつつも
何故だか無性に興味を掻き立てられる感覚に襲われていた。…………
「ーーー噛み付くとはな。
そんなに泣いてるところを見られたくなかったのか?意外と可愛げがあるじゃねぇか」
「………なにそれ。馬鹿にしてんの?」
「ははっ、図星だろ。泣くほど寂しいなら一緒に寝てやるぞ」
・・・・・
憎たらしく茶化してくる、
この青い目。
弱みを握って勝ち誇ったように、
私を見る目。
ーーー気に入らない。
「………そう。
なら………一緒に寝よう、かな」
険しかった顔つきから一転、
憂いを秘めた笑みでそう呟いた蓮は
羽織っていたカーディガンをおもむろに脱ぎーーー
躊躇無く下着をも取り払っていく。
下腹部に身に着けていた最後の一枚がするすると両脚に沿って下へ滑り……音も無く床の板張りに落ちた。
「受け止めてくれるんでしょ?
寂しさも、この怒りもーーー」
ーーー最初会った時から思ってた
その余裕ぶった目が気に入らないの。
喉笛を引き裂いて、
息の根を止めて。
私が全て、喰らい尽くしてあげる。
ーーー僅かな行灯の明かりに浮かび上がるしなやかな肢体は洗練された筋肉が程良くついていて細長く、
胸の膨らみに掛かる漆黒の髪は艷やかで。
外界に面した障子………その合間から覗く満月を背にして、
唇に付着した血をぺろりと舌で舐め取る妖麗な表情と姿形はまるで……闇夜で狙いを定める美しい獣のようだったーーー
「…………」
政宗はごくりと喉を鳴らし、
誘われるかの如く……
一糸纏わぬ蓮との距離を縮めていく。
ーーーーーー
一戦を交えるには不足の無い女。
喰うか、喰われるのかーーー
試してみようか。
ーーーーーー………
間合いに入った瞬間。
蓮の手首を捕らえると
部屋の中へ引き入れ……
ピシャリ、と襖を閉めた。