第21章 『勝敗』 ※R-18
“百合が可哀想だ”
ーーー知ったようなことを言って。
“お前みたいな女が妹なんて………”
ーーー他人のくせに勝手なことを言って。
私は誰よりも姉を大事に想ってるんだ。
あんた達なんかよりも、
ずっとずっと昔から一緒だったこの私が一番………
だから同じように姉も私を一番大事に想ってくれてた筈なんだ。
私だけを。
私だけ、だった、のに・・・・・
「おい」
不意に、背後から聞き覚えのある声。
我に返ると、今現在自分が立っている場所に違和感があり周囲を一瞥してみる。
表に出せない叫びを脳内で吐き散らしているうちに、どうやら別の通路を歩いてきてしまったらしく……
引き返そうと思ったが、
すぐには振り向けなかった。
「ーーー泣いて、いるのか?」
「…………」
「なんなら慰めてやってもいいぞ」
ーーー……
その軽々しい物言いに、
妙な苛つきが込み上げてきた私は
忌々しく頬を伝っていたものを
袖で無造作に拭き取ると
身体を反転させ、声の主と対面した。
「泣く訳ないでしょ、この私が」
「………はっ、そういう事にしといてやるよ」
通路の並びにある一室ーーーそこがこの男に宛てがわれた部屋なのだろう。全開した襖の柱にもたれ掛かり、ニッと口元に弧を描いてこちらの様子を観察しているのは………伊達 政宗。
思った通り、軽薄で無礼な男だ。
「…………」
音をたてず、一歩一歩を踏み締めて接近していった蓮は………
政宗の衿に掴み掛かり、引き寄せるとその唇を塞いだ。