第21章 『勝敗』 ※R-18
豊臣が私のことを危険視やら敵視するのも無理は無い。
何度も織田に喰って掛かり
あまつさえ懐剣まで所持して脅迫めいた発言しちゃったからねぇ。
きっとずーっとマークされてたんだろうな。
……まったく。
その見事な忠誠心、さっきの男にも見習わせてあげりゃいいのに。
「……何が可笑しい」
にやりと不敵に笑う蓮を不可解に感じた秀吉は掴もうと伸ばしかけた手を宙で止めた。
「ふ……見当違いもいいとこだなー、って」
「見当違い……だと?」
「そう。
今夜の私の目的はあいつを殺すことじゃない。あいつと寝ることなんだからさ」
「寝る………!?」
「寝込みを襲えば既成事実つくるくらい簡単でしょ?ーーー私が織田に抱かれたと姉貴が知ったらどうなると思う?」
「………」
決まってる。
純粋な姉のことだ、
たった一度でも不貞をされればショックを受けて立ち直れないだろう。
下らない恋愛や
卑しい“男”という生き物の現実を思い知って
絶望に打ちひしがれーーー
そのうち、
現代へ帰る と決心してくれる筈。
例え恨まれても……
もう二度と離れ離れになりたくないんだ。
二度とーーー………
「可哀想、だな」
俯いていた豊臣が面を上げ唐突にぽつり、とそんなことを口にした。
「ハハッなにそれ、私は可哀想なんかじゃ……」
「お前じゃない。百合が、だ」
「え………」
「百合が可哀想だ。
お前みたいな女が妹なんて……」
ーーーーーー。
見据え合う二人の間に訪れる
しん、とした静寂。
どうせ憎たらしく言い返してくるのだろうーーー
そう予想していた秀吉は冷めた目つきで蓮の出方を伺っていたが………
垣間見えたのだ。
薄ら笑いの狭間に揺れる、
悲しそうな濡れた瞳がーーー。