第21章 『勝敗』 ※R-18
偶然通り掛かったのか、
それとも初めから見張られていたのかーーー
どちらなのかは知ったこっちゃないが、厄介な人物に目撃されてしまった。
薄暗い通路に立つ豊臣は怒りに満ちた表情をこちらに向けていて、
眉間にはぐっと深い皺が刻まれていた。
「ひっ……秀吉様!これは、その……っ
申し訳ございません!私とした事が……!」
家臣の男は慌てて蓮を押し退け、床に両手をついて地に伏せると必死に頭を垂れる。
すぐそばまでやって来た秀吉は
その様子を見下ろし、はぁー……と呆れたように溜め息を吐く。
「あんな安っぽい誘いに惑わされるようじゃ見張り役は務まらないぞ。……
ーーー次は無いからな」
「……っ、……
はっ!確と心得ておきます故……!」
お咎め無しと分かり、ホッと安堵した家臣は額に脂汗を浮かべ頭を垂れたまま姿勢を崩さずにいた。
・・・・・
あーあ、面倒臭いことになったな。
作戦失敗、か。
心中でボソッと呟き、気怠そうに立ち上がった蓮は何事も無かったかのように二人の横を通り過ぎ去ろうとした………
が、
進路を阻む秀吉に腕を掴まれ
逆方向の廊下側へ引っ張られる。
「ちょ……何すんの?離してよ!」
「いいから来るんだ」
その場から離れ、ずんずんと足早に何処かへ連れ出されていき………
歩いている最中も激しく抵抗していた蓮は、
通路をだいぶ進んだところで思いきり力任せに振り解いた。
「ーーーいい加減にしてよ。一体どこへ連れていこうとしてる訳?」
「……牢だ。お前をそこにぶち込む」
「はぁ?男を誘惑しただけなのに?」
「だけ?とぼけるな。そうやって天主へ忍び入り信長様を殺める算段だったんだろう?
ーーー来い、危険な奴にうろつかれては困る」
未だ収まらない怒りを滲ませる秀吉はそう確信に迫り、
悪しき女を再び捕らえようと手を伸ばすーーー