第21章 『勝敗』 ※R-18
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宴のあとの静けさが漂う、城内。
殆どの者達は床に就き、
起きている者は僅か……。
その僅かなうちの一人、蓮は
所々にしかない行灯の明かりを頼りに
ひたひたと廊下を歩いていた。
ーーー石田が分かり易く案内してくれたお陰で助かったよ。
このだだっ広い中でも、目的地まで迷うことは無さそうだ。
……とはいえ、
全てを覚えた訳じゃない。
要所要所を記憶しているだけでーーー
特に、今から向かう敵の棲家ーーー天守への道のりはハッキリと脳にインプットしてある。
ちなみに織田は“天守”ではなく“天主”と称しているそうだ。
天の主、か……
ーーー偉そうに。
ふん、と鼻を鳴らし
冷え冷えとした板張りの上を裸足でひたすら歩いていき………
ようやく目当ての付近まで来ると。
天主へと続く急な階段の下には、
見張り役と思われる家臣の男が座していた。
・・・・・
一瞬足を止めたがーーー
ひとつ間を置いて、
ゆっくりと近寄っていく。
「お疲れー」
抑揚の無い声音で労りの台詞を投げ掛け、
男の真横を軽快に通り過ぎようとした、のだが。
「ーーーお待ち下さい」
「……何」
「ここから先は、お通し出来ません」
「は?別にいいでしょ」
「御館様は就寝中ですので訪問は控えて頂きたいのです。
緊急時、または百合様なら構わないのですが……用件があるのでしたら是非また明日にでも……」
「…………」
ふーん。
“百合様”の妹である私が相手でも融通利かないんだ。
なにせ“御館様”が眠ってんだもんね。
簡単には行かせてくれない、か。
でもーーー