第21章 『勝敗』 ※R-18
「ーーーでね、ここでも針子として色々作れるし、
何不自由の無い生活させて貰ってるの」
「ふーん。」
「だから……蓮にも分かって欲しいの。
信長様のそばに居ることが私の幸せだ、って」
「…………」
長々とした惚気も終わり、
私を納得させようと
姉が一気に畳み掛けてきた。
そうすると………
ほーら、また目ぇ潤ませてる・・・・・
再び弱点を突かれて狼狽えてしまう。
無言で耐えていたが、
ぎゅっと両手を握られ涙目で訴えられ…………
圧に負けた私は、
とりあえず一旦「分かった」と返事をしてその場をやり過ごした。
理解してくれたんだ、と勘違いして喜ぶ姉と小梅はその後も女特有の恋愛話に興じーーー
私はというと、横に寝転がり適当に相槌を打つのみで。
夜更けになる頃は、
一人、また一人と眠りに就いていったーーー
「……………」
行灯の明かりだけが浮かびあがる闇の中。
寝た振りを演じていた漆黒の瞳が
すっ と見開く。
上半身を起こし……
他二人の状態を確認する。
奥側には、寝言をこぼし能天気な寝顔の小梅。
隣には、幸せそうにすやすやと眠る姉。
幸せそうに・・・・・
ーーーああ、
どこまでも純粋で、
簡単に人を信じて。
愛に生きる、姉。
・・・・・ほんと、脳内に花が咲いてるね。
馬鹿みたい。
そんなものは、根っこから茎を引き抜いてーーー
毟ってあげる。
私が、現実を、見せてあげる。
クッ、と片方の口角を吊り上げた蓮は
褥の狭間から静かに滑り出ると……
カーディガンのボタンをひとつ残らず外し、
部屋をあとにした。