第21章 『勝敗』 ※R-18
両隣に座していた明智と伊達が丸くした目で追うなか、
無言で速やかに突き進んで行くと……
熱心にスマホを弄っていた織田が顔を上げ、
近付いていく私の姿を捉えた。
「………殺気立っているな。
どうした?その徳利で俺の脳天をかち割る企てか?」
「それも良い考えだけど……
まぁ、一杯」
上座の真正面に腰を下ろし、
憎き敵の盃にとくとくと酒を注ぎ入れ………
その横で不思議そうに私の行動を見つめている姉の膳から猪口を掠め取ると、
中身を一気に飲み干した。
「姉貴は酒が弱いから、私がとことん付き合ってあげる。
……まさかあんたも弱い……とか言わないよね?」
「ふ……、俺は上戸だ。どういう風の吹き回しかは知らんが………いいだろう、付き合わせてやる」
ニヤリと笑い、盃を傾け喉へ流し込みーーー
飲みきった空のそれを置いた織田が
次は私の猪口に酒を注いでいく。
「そうこなくっちゃ。」
こちらも負けじと余裕の笑みを浮かべて猪口を掲げ、飲み終わるとすかさずまた織田の盃に酒を注ぐーーー。
ーーー平気でいられるのも今のうちだけなんだから。
私の酒の強さに勝てるもんなら勝ってみな。
あんたを酔い潰して、情けない醜態を晒してやるから。ーーー
こうして突如始まった二人の“飲み比べ”は
異様な雰囲気を醸し出していて。
酒を追加する為に右往左往する女中等、
二人の周りをぐるぐると踊り回って応援する小梅、
固唾を飲んでハラハラと見守る百合・秀吉・三成、
好奇の眼差しを送る光秀、
愉しげに口笛を吹いて煽る政宗、
小梅から解放されて安堵している家康………
ーーー各人各様の思いと振る舞いが混沌とした宴は、じわじわと熱気が高まっていたーーー