第21章 『勝敗』 ※R-18
見ると、
徳川にくっついていた筈の小梅が上座に移動し、手にしていたスマホを織田の前に差し出していて。
ライターに感心していた豊臣や石田も、現れた更なる現代品に惹かれ傍らから画面を覗いている。
「信長様ぁ、見て見て〜。これ百合先輩が賞取った時の服なんだよ!モデルは蓮ちゃん」
「もでる、とは何だ?」
「あのね、服が映えるように格好良く着こなす人の事でーーー」
・・・・・
げ。
小梅がうきうきと見せびらかしている写真………きっとあれだ。
ーーー姉が服飾学校に通っていた頃ーーー学祭の恒例行事だったファッションショー。
学生達にとってはここ一番の腕の見せ所で、
170センチ超えという無駄に長身の妹をモデルに起用した姉は日夜試行錯誤を重ね、仕立て上げ……
当日、私はその服を着てステージに立った。
やけに響く音楽と熱いライトの下、
盛大に沸く観衆ーーー
緊張もせず誇らしくランウェイを歩いていたのを覚えている。
結果は、優秀賞。
最優秀賞は逃したものの……
嬉しかった。
いつか……
プロのデザイナーとして活躍する姉の服を着てまた颯爽とショーに出るんだ。
そんな夢を抱きーーー
大学に行きながらモデルの仕事もしていた……のに。
「服……確か先の世の着物を指す名称だったな。
針子の名誉を勝ち得るとは称賛に値するぞ、百合」
「そんな……褒め過ぎです、信長様」
功績を讃え、愛おしげな眼差しを姉に送る織田とーーー
嬉しそうにはにかむ姉。
・・・・・
ああ、まただ。
ーーー苛々する。
私のささやかな夢を奪ったあの男にも、
喜んでついていく姉にも。
私だけが、置いてきぼりだ。
「…………」
蓮は膳の隅にあった徳利をグッと握り掴むと、席を立ち上座へと一歩踏み出した。