第21章 『勝敗』 ※R-18
すると、
後から続いて来た女中等が各々の膳に椀を置いていき………
伊達は鍋から杓子で掬った何かを盛って席を回っていた。
「………?」
何故この男が給仕みたいなことをしているのだろう………と漠然とせず首を捻っていると。
ついに自分のところにも順番が訪れ
盛られたものは、雑炊だった。
「食え、締めに作ったんだ」
そう言って最後に己の分を適当によそい、編み藁の上に鍋を置き隣の席にドカッと腰を下ろす伊達とーーー手元の雑炊を交互に見比べる私は、予想外のあまり耳を疑った。
・・・・・
・・・え。
「……作った?あんたが?」
「ああ、そこに並んでるもんは全て俺が手掛けた。今夜は宴だからな」
「………」
これ全部?
この軽薄そうな男が?
葱や人参、椎茸などの具に彩られ
つやつやとした米の表面から漂う香りが鼻をくすぐる。
匙で一口運んでみると、
普段決して豊かではない自分の表情が緩みそうになってしまう程の絶品で。
「ーーーどうだ、味は?」
・・・・・
正直、“美味い”以外のなにものでもない。
料理には自信がある私よりも上手かもしれない。
ただ、
余裕を含んだ伊達の目がーーーなんとなく気に入らなくて。
「……まぁまぁじゃない?」
わざとつっけんどんな素振りで短く感想を述べると、機嫌を損ねるどころか伊達はふっと笑った。
「そうか、美味いか」
隻眼を細めるその笑顔は朗らかでーーー
呆気にとられる私を余所に
揚々と食事を始めた。
「…………」
・・・・・この男・・・・・。
簡単に見透かされた事が悔しくて、
次から次へと無心に料理を噛み締めているとーーー
今日は特になにかと私の頭を悩ますソプラノの甲高い声が上座の方角から湧いた。