第21章 『勝敗』 ※R-18
「あんたのせーで私のライター、暫く返って来なさそうなんだけど」
「ああ、お館様は探求心の旺盛なお方だからな。
お陰で俺はこれ以上煙たい思いをしなくて済みそうだ」
…………
この男、もしや計画的犯行なんじゃ………
喉を鳴らし、くつくつと笑うそのさまが憎たらしくて顔面に煙を吹きかけてやろうとしたが後々手の込んだ仕返しをされそうな予感がして思いとどまった。
…………姉から聞いた話では、織田以外で安土城に出入りしてる武将は全部で五人。
四人の名と顔は既に把握した。
残るは一人。
という事は………この男はきっと。
ーーー明智光秀。
織田信長直属の家臣であり、
主君の天下統一に尽力するも
あと一歩という時に突如反旗を翻し、
かの有名な本能寺の変を起こした反逆者。
動機は諸説あるが、戦国史最大の謎だと現代には伝わっているーーー
が。
またもや姉から聞いた情報によると
真相はどうやら違うみたいで。
特別歴史ファンでもないが、真実を知る事が出来て少しわくわくしてしまった。
「ふぅ……さてと……どれどれ、戦国料理ってどんな感じな訳?」
短くなった煙草を灰皿に押し付けて消し、
早速膳に並んでいる料理に箸をつけてみる。
………
……………
あれ…………
美味しい………。
口にしたのは金目鯛の煮付け。
絶妙な甘辛加減。
どこぞの料亭で提供されててもおかしくない程。
次に、汁物が入った椀を持ち上げ一口啜るとーーーこれまた美味い。
鶏出汁だろうか。
しょっぱ過ぎず、薄過ぎず………
とにかく秀逸な一品だ。
ここの料理番はかなりの腕前なんだな、と感嘆し
黙々と食べ漁っていると。
すっと襖が開き、
食欲をそそる湯気がふわふわと立ちこめる大鍋を両手に持った伊達が姿を現した。