第20章 二人目の主人公編 『到着』
「ーーー」
刹那、
伏せていた瞼を見開いた政宗は
予想外な蓮の所作に
思わず顎を引き、口を離した。
「………どうしたの?続きは?
それとも先に脱ごうか」
小首を傾げ
くすり、と邪気に笑いーーー
見慣れない羽織の留め具を外す素振りをする、
禍々しい様相の女。
「ねぇ、聞いてんの?折角だし愉しもーよ」
「…………」
・・・・・ほんの少し、脅かすつもりだった。
いくら生意気な女でも
こうしてちょっかいを掛けてやれば
照れたり、慌てたりしてーーー
その反応が面白くもあり、可愛らしくもある
こいつもきっとそうだ
・・・・・そう踏んでいた。
けど。
この女はーーー
「お前は………本当に百合の妹、か………?」
そよ風に揺られて健気に咲く、
可憐な野花のようなーーー百合。
そんな百合とは似ても似つかぬ空気を放つこの女が妹だとは容易に信じ難かったのだ。
……………
ーーーだが、悪くはないーーー
唖然としていた政宗の唇の口角が上がり、
笑みを残したままの蓮がそこに迫っていき・・・・・
行灯の光によって畳に映っていた二つの影が重なろうとしていた、時。
「ーーー何をしているんだ?」
・・・・・
寸前でピタリと止めた蓮は
開きっぱなしになっていた襖の方へと視線を流す。
腕を組んで柱に身を預けている、緑色の着物を着た男。
眉を潜め、やや垂れた形の目を細めこちらに向けて睨みを利かせている。
ーーー……
誰………?
広間でやたらと口煩かったっけ。
ええっと・・・・・
「お前こそ何しに来たんだ?秀吉」
動じる事無く、私を腕に抱いている姿勢を崩さずに問い返す伊達の言葉を耳にして
やっと男の正体が解った。