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【イケメン戦国】戦国舞花録

第20章 二人目の主人公編 『到着』




「へぇ……良いもん貰った」


スッと懐剣を手に取り、再び好戦的な視線を信長に向けているとーーー
わなわなと怒りに震えていた秀吉が立ち上がり
蓮の方へ足を踏み出す。


「お前、無礼もいい加減にしろ!いくら百合の妹でも容赦する訳には………」

「下がれ、猿。
………それよりも、今日は百合が無事帰還した祝いの宴を催す予定だろう」

「ですが、こんな時に………!」

「下がれ」


一段と低い声音を放つ信長にピシャリと制され、
これ以上の物言いは厳禁だと悟った秀吉は口を噤みーーー渋々と引き下がると定位置に戻り座礼をした。


「準備が整うまで俺は天守で一休みする。
百合、来い」


信長はゆるりと腰を上げると黒い着流しを翻し、蓮達とは別の方向にある障子へと歩み進んで行く。


「は……はいっ……。
ねぇ蓮、後で……私達だけできちんと話そう?」

「………」

「ね?ちゃんと話したいの」

「………分かったから。
とっとと行けば?置いてかれるんじゃないの」


私が投げやりに答えると、姉は少し困惑気味だったが「………ごめんね」と小さく呟き
小走りで織田の背中を追っていった。


・・・・・


だからさ、謝られると余計惨めになるって気付けよ。



ーーー苛々する。



「さぁ、蓮様。小梅様。
宴まで時間がありますのでこれから私が安土城の内部を案内致しますね」


無言で立ちすくんでいると、
何事も無かったかのような澄んだ笑顔の石田三成が私達二人を広間の外へと導く。


「……あんた、私がこんな凶器持ってるっていうのによく平気でそんな事出来るね」

「貴女は百合様の妹君ですよ?危険な真似をするとは思えません。
大丈夫ですよ、貴女なら」




ーーー余裕だな。
確かにそうそうたる各武将達が揃うこの城の中で私が短刀ひとつで暴れても勝算は皆無だからね。
得策ではない、と解っているのだろう。





でもね、石田。
私の武器はこの懐剣だけじゃないってこと、
あんたは知らない。



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