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【イケメン戦国】戦国舞花録

第20章 二人目の主人公編 『到着』




「分かってるよそんな事ぐらい!」


それは、核心を突く言葉で。

ーーー私が暴れたところで敵う筈もない、と分かっていても一矢報いてやりたかったんだ。

それしか、為す術が無かったから。


「………っ」


俯いてぎゅっと下唇を噛んでいるとーーー

そばまで歩み寄ってくる、
私よりずっと背の低い姉が視界に入った。


「蓮………ごめんね」


悲しげに見上げて謝るその様は、全てを物語っていて。

もう、どうする事もできない
姉の意思は曲げられないーーーそう悟ったのだ。


ーーーなんで……?
なんであの人なの?
なんでこんな不便で危険な時代に来てまであの人を選ぶの?
家族よりもあの人の方が大切なの?
……私よりも…………


「…………」


泣くもんか。
こんなところで絶対泣くもんか。

自分の腕をつねりあげ、
必死に耐えているとーーー


「それを貴様にくれてやる」


織田が懐から何かを取り出し、畳上を滑らせこちらに寄越してきた。
見るとそれは鞘に収まった短い刀で……
懐剣、というやつだろうか。


「貴様らはいつ元の世へ帰れるか目処も立っていない故、どちらにしろこの城に留まる他無いだろう。
…………俺が百合に相応しくない男だと思うならばその刃で貫くが良い。
ここで生活をする間、貴様の眼で見極めろ」


・・・・・


この男…………
私を挑発してるんだろうか。



「……は……?こんなもの渡すなんてよっぽど自信あるんだ、あんた」

「無論。
………それにこの俺に楯突く貴様の度胸、気に入った」

「…………ふーん……そりゃどーも。寝首掻かれないように用心しといてね」

「威勢が良いな。愉しみにしておる」


口端を上げ、笑みを浮かべーーー
互いに目と目を逸らさず………

広間には緊張感が漂っていた。



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