第20章 二人目の主人公編 『到着』
蓮は、己の行動をひどく後悔していた。
ーーーまずい。
こんな醜態晒すなんて………。
傍らでは
一旦黙ったとはいえ、叱られた自覚も無いのかニコニコと笑顔を絶やさない小梅が武将達の容姿を観察してる。
ああ、この子のペースに巻き込まれたらろくな事が無い…………
はぁー………と何度目か分からない溜め息を吐き項垂れていると。
「貴様等、名は」
それまで沈黙を守っていた、
信長の重厚な一声が響きーーー
そうすると周りの一同は即座に会話を止め
辺りはシン………と静まり返る。
ーーーやはりこの男の権威というものは絶大なのだーーー
改めて感じる。
只者ではないと。
この巨大な山を動かすには、
感情的に攻め立てるだけではびくともしないだろう。
冷静に、淡々と、
ひたすら下手に、下手にーーー…………
「私はぁ、木下小梅といってぇ………あっ」
「後にして」
甘えた口調で自己紹介を始めようとする小梅を片手で押し退け、
一歩前に出る。
数メートル距離が空いた先ーーー正面には、
紅に光る瞳で私を見据える、
安土城の城主、織田信長
天下統一を掲げ邁進した、野心家。
・・・・・
こんな大物相手には太刀打ち出来ないって分かってる。
下手に、下手に、ひたすら下手に
こうするしかないんだ。
私の高いプライドなんて捨ててやるさ。
姉の為なら。
「草間蓮、といいます。………織田…信長様、」
ゆっくりと身体を下降させ、
前傾姿勢になり・・・・・
膝と手を畳についた。
「姉を、返してください」