第19章 第二幕 プロローグ
「どーもー。二人共可愛いね。飲み物奢ってあげよっか」
ほろ酔い気味でニヤニヤと話し掛けてくる見知らぬ男。
ああ、まーた来たよ。こういう奴が。
桜子が迷惑そうに睨みつけてる。
「要らない。私達これからここ出るんだよね」
「えー?いいじゃん、飲もうよー」
「や、飲まねーから」
しつこく迫る口振りに苛々を募らせている桜子を尻目に、私は男の品定めをしていた。
………………
どうせ一緒に飲むだけが目的じゃないだろうに。
男なんてそんなもん。
いつだってそう。
……………。だいたい20代前半、か…………
顔面レベル:並の上
スタイル:中肉中背
清潔度:まぁまぁ
………………
ふーん。
これなら、別にいいか。
いいんじゃない?
眠気覚ましにはなるんじゃない?
煙草を灰皿にギュッと押し付け、余った酒を喉に流し込んだ。
「おにーさん、私なら遊んであげてもいいよ」
首を傾け、黒々とした長髪を揺らし妖艶に微笑むと、
男は、嬉しそうに私の手を取る。
背後で桜子が不満げに喚いてるけど知ったこっちゃない。
「後で合流しに行く。終わったら連絡するから」
それだけ言い残して
人々の熱気と騒音が込もるその場を立ち去ったーーー。
草間蓮、今年で21歳。大学生。
経験人数は数えきれない程多けれど、
まだ“恋”は知らない。ーーー