第19章 第二幕 プロローグ
タイムスリップした日から遡ること一ヶ月前ーーー
現代。
某所、某クラブにて。
「テキーラ・サンライズ」
大音量が響くフロア内の一角にあるカウンターに空いたグラスを置き、また新たに注文する一人の女。
灰皿の縁に弾ませた煙草を口に運びーーー
艶めいた唇で軽く吸引したあと、紫煙を上部の空間に吐き出した。
あー・・・・・眠い・・・・・。
ジーンズのポケットから取り出したスマホの画面を覗くと、午前3時を過ぎていた。
私は友人達によって半ば強制的に遊びに連れられ、ここに来ている。
明日……っていうかもう今日だけど、日曜だから別にいっかー、なんて付き合っていた。
でも、いい加減飽きたし眠くて仕様がない。
やっぱり早めに帰ればよかった。読みかけていた本の続きも気になるし。
店員から差し出された酒を受け取り
前髪を掻き上げ溜め息をついていると、ふいに肩を景気良く叩かれる感触ーーー。
「うぇーい!なーに一人で飲んでんの?ひと口ちょーだい」
さっきまで音に合わせて散々飛び跳ねていた友人ーーー桜子が、陽気に私のグラスを奪いぐいっと口元に傾ける。
「……うざ。」
「はー?相変わらずノリ悪いねあんたは。ねぇ、これから皆でカラオケに場所移そーって話してたんだけどさ、行こ?始発まで時間あるし」
元気だな、こいつは……。
幼馴染みの桜子は昔から、騒がしいお祭り女だ。
ま、ムードメーカーでもあるんだけど……
私とは真逆のタイプ。
カラオケか……ソファに横になって寝れるし悪くないかも。
ふわぁ、とあくびをしてそんな事を考えていると
フラリと男が一人、近寄ってきた。