第17章 ユー・セイド・“グッド”
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「曲者はおらぬかっ!?」
「見当たらんな……だが、いつ何処から攻めてくるか分からんぞ。抜かるな!」
帯に挟め込んである竹刀の柄を握り、武士の真似事をして林道を進む楓と紅葉は楽しそうにきょろきょろと辺りを見回す。
「お、おー………」
複雑な胸中だった弁丸は、姉達の調子に合わせて覇気の無い声音で応えた。………
ーーーまだ、不安は拭い切れていなかったのだ。
父と母にどれだけ叱られるのか、という恐れは勿論の事………
山のふもとからだいぶ奥の方まで来たように感じ、行きは良いが帰りは大丈夫なのかとーーー背後を何度も見返していた。
すると、双子が唐突に歓声を上げた。
「「あっ、蛙だーーー!」」
発見したのは、無数に生えている植物の葉にペタリと乗り体を休めている雨蛙。
その小振りで愛嬌のある姿形に、口元が綻ぶ。
「わぁ、可愛いー」
「捕まえて持って帰ろ!」
ついこないだ城に訪れた佐助から伝授されし忍び足で、そぉっと標的に接近する二人。そばで見ていた弁丸も興味をそそられ瞳を凝らす。
気配を悟った光沢のある目玉が、ちろ、と三人を捉えーーー瞬時に飛び跳ねた。
萌黄色の肢体がしなやかに舞い、林道から外れた草むらへと逃げていく。
「「「待て〜!」」」
誘われるようにそちらへ駆け出しーーー
行方をくらました主を追い求め更に奥へ奥へと侵入していった、のだが。
そんな子ども達を警戒する唸りが、草影から重く伝わる。
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全員がぎくり、と立ち止まり………
耳を澄ましているとーーー
「「「……………!!」」」
ガサガサ草葉を揺らし掻き分け………出現したのは、
ーーー 一頭の獣だった。