第17章 ユー・セイド・“グッド”
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
その頃、上田城ではーーー
「………っらぁ!!」
腿を引き上げ、思い切り前蹴りを繰り出すと桜子の視界に光が差し……
放たれた足技の衝撃で、閉ざされていた引き戸はレールから外れ凄まじい音をたてて廊下の上に倒れ伏せた。
「はぁ……はぁ……」
薄っすらと汗が滲んだ額を手の甲で拭いやっと納戸から出ると、爪先に硬いものが当たりカランと転がった。
ーーー木刀だ。
………………
成程。これを戸に引っ掛けてた、って訳か……。………
「……もぉーーー!あのガキんちょ共ーーー!!」
天を仰いで発狂していると、埃にまみれた私の髪をクン、と無造作に引っ張る感触がしたので誰の仕業かと視線を鋭くそちらへ動かすと、
耳の穴に人差し指を突っ込んだ幸が眉間に深々と皺を刻ませていた。
「……うるっせぇな、おめーはよ」
「幸っ!だって聞いてよ!あの子達っ……」
「あー、城から抜け出したんだってな」
「えっ!?」
「お前も行方不明になるし、城内大騒ぎになってんだよ、今。あいつ等の事は部下が捜索に出払ってる」
ーーー……
抜け出した……!?
あんな小っちゃい子だけで……?
一度引いた筈の汗が再び吹き出し、背筋が凍りつく。
「まさかこんなとこに閉じ込められてたとはな。ぷっ、間抜け。」
「なっ……笑ってる暇ないよ!私達も早く探しに行かなくちゃ!」
「そーだな。」
踵を返し、後頭部を掻きながら何処かへ歩き出す彼の余裕さに苛立ち、走り寄り着物の袖を掴む。
「なに悠長に構えてんの!?急いで!!」
「焦って闇雲に探したって時間の無駄だ。こーいう場合はな、適任者に任せるのが最短なんだよ。居んだろ、鼻の利く奴が」
にやりと私の肩に腕を回すと、外界に対面している障子まで歩いていき引手に手を掛けた。