第17章 ユー・セイド・“グッド”
「「「あっ」」」
同時に被った三つの幼い声ーーー。
唇を重ねたままの私と幸はびくっ、と肩をすくめーーー瞬間的に嫌な汗が滲んだ。
………………
同極の磁石が反発するかの如く一気に離れ、声の主を見やると
拳一つ分程度開いていた襖の間から、昼寝から起きてきたのであろう子ども達が食い入るように凝視していた。
「おっ……お前等もう起きたのか。早いなー。」
「そんなとこで固まってないでこっちおいでー。」
しどろもどろに棒読みで呼び掛ける私達は、きっと不自然極まりなく映っているに違いない。
三人は訝しげな眼差しをこちらに送りながらぞろぞろと座敷へ足を踏み入れてきた。
「「ねえ、なんで父上は母上とお口くっつけてたの?」」
「……え〜と、それは、だな……」
「「ねえ、なんで?なんで?」」
幸の腕を引っ張り、双子揃って問う。
上手い言い訳を導き出せず目を泳がせている父親をジッと見上げていた。
弁丸もその後ろからまだ凝視してる。
やばい。ここはなんとしてでも切り抜けなければ!
「おまじないだよ〜、さっきのは」
身を乗り出し、幸のピンチを救うべく助け舟を出す。
小さい子どもが納得しそうな言い訳なんてこんな事ぐらいしか思いつかない。
三人が一斉に私に注目する。
「「「おまじない?」」」
「そ〜。元気になるおまじない。私に元気になぁれ〜ってやってくれたんだよ。優しいでしょ、父上は」
「「「………ふーん………」」」
首を傾げつつ、とりあえず一応納得はしたのか
双子は別の話題を切り出し騒ぎ始めた。
弁丸だけは無言で両親を交互に観察しているがそれ以上は追求してこなかった。