第17章 ユー・セイド・“グッド”
傍らに座り、手伝おうとしたがやんわりと制される。
「いーから、その辺で甘味でも食ってれば。お前痩せ過ぎ。」
「………」
鼻の奥が詰まって、
涙腺の締まりが弱くなっていく。
“太ったんじゃねーの”
って、からかって言ってた癖に……
「………色々とやってくれたんでしょ?………ありがと」
「……別に。お前がぐーすか寝てるから暇だっただけだ」
視線はずっと障子の方に向けられ、
桟に付着した古い糊を箆で削っていた。
素っ気無い振りしてるけど………
礼を言われて照れ臭いのか、耳がほんのり赤みを帯びている。
何年経っても相変わらずの、彼。
正攻法じゃない優しさ。
そんな不器用さがずっと好きだった。
今もこうして私の胸を熱くさせる。
「幸、ありがとね。……大好き、だよ」
彼の視界を遮るように覗き込んでそう言うと、
照れ隠しにきゅっと一文字に結んでいた唇が、
涙が伝って濡れていた私のそれに落ちてきた。
閨での口付けとは異なる、穏やかな愛を受け止め………
何ものにも代え難い幸せに満たされていったのだった。