第17章 ユー・セイド・“グッド”
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「う……ん……」
褥で大の字で眠っていた桜子は覚醒し、
微睡んだ瞳がぼやけた天井を捉える。
あれ、ここどこだっけ………
なんか腰が怠い……。
もうちょっと寝よ………
………………………
・・・・じゃなーーーい!!
がばぁ、と跳ねるように身を起こす。
まずいまずいまずい!
どの位寝ちゃってたんだろう!?
着物のお直しと障子の貼り替えしなきゃ!
掃除も!
見渡すが、隣に居たはずの幸は消えていた。
焦燥感に苛まれ、わたわたと蚊帳から出る。
と………
「ん………?」
乱れていた自身の着物を整えていると、
指に巻かれている包帯に目が行く。
裁縫の時、誤って何ヶ所も刺してしまった数本の指。
血は既に止まっていたし、舐めときゃ治るかと放っておいていた。のに。
「幸………」
大げさに巻かれた包帯をさすり、
彼を探そうと奥の間の襖を開けたらーーー
「あ………」
無人の室内は
物が綺麗に片付けられ………
棚や文机の上を撫でても塵ひとつ残っていなかった。
部屋の片隅には、裁縫箱と……
畳まれた子どもの着物。
ほつれていた袖ぐりは、私がやるよりも上手に、丁寧に縫われていた。
「…………」
すぐさま廊下へ飛び出し、
もしや、と思い先程の縁側に向かって走った。
もしかして、
もしかして…………
息を切らし走り、そこへ着くとーーー
穴の開いた障子戸を畳の上に寝かせ、紙を剥がしている最中の幸がいた。
一瞬顔を上げこちらを一瞥したが、すぐ手元に視線を戻していた。