第17章 ユー・セイド・“グッド”
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弁丸はすっかり涙が止まり、
怒りで興奮気味だった桜子の機嫌もようやく直ったのか縁側でにこにこと裁縫に取り掛かっている。
元気が有り余っている子ども達と遊んでやろうかと、庭へ出てきたがーーー
「行けっ!狙うは敵将の首!」
「応よ!覚悟ー!」
紅葉が大声を張り上げると、答えた楓が竹刀を振りかざし突進してくる。
地べたに座り、子ども用の竹刀を構えている俺の頭上に攻撃の一手が襲いかかろうとしたので
カン、と軽く弾いて制した。
すると紅葉も助太刀に入る。
「お主、噂通りの猛者だな!私が叩き伏せてやろうぞ!」
「いや、この私が!」
交互に叫びながらブンブンと竹刀を振り下ろす双子の猛攻。
俺は次々と余裕で捌きつつ、
その芝居がかった台詞が可笑しくて笑ってしまった。
ーーー娘達は、ままごとや人形遊びには大して興味を示さず
こうした合戦ごっこを好み
その度に俺は“敵将役”をやらされているのだ。
自然の中で遊ぶのも好きで、先日は大量の草履虫を捕まえて持ち帰り、桜子が悲鳴を上げていた。
やんちゃで負けん気の強い、楓と紅葉。
普段から剣術や体術も自らすすんで鍛錬してる。
容姿も性質も桜子そのものだ。
最高に可愛い、俺の娘。
それとーーー
「…………」
少し距離を空けた場所にぽつんと立ち尽くしている、息子。
双子に気合負けして、加われずにいるようだ。
「弁丸、お前も来い。楓と紅葉はまた後でな?順番だ」
文句を垂れる二人になんとか言い聞かせ、
弁丸に手招きをすると
途端に瞳を明るく輝かせて
喜び勇んで飛び出してきた。