第17章 ユー・セイド・“グッド”
今しがた出先から帰ってきたのであろう幸が呆れた面持ちで現れると、
コロッと態度が一変した双子が競うように駆け寄って行く。
「「父上〜!おかえりなさーい!」」
「おー、ただいま。良い子にしてたか?」
「「うん!してた!」」
娘達に囲まれた途端、笑顔になりしゃがんで二人の頭をくしゃくしゃと撫で回す幸。
すごーく微笑ましい光景なんだけども…………見入ってる場合じゃない。
「幸っ、その子達さっきまで暴れて凄かったんだから!叱ってやって!」
「一体なんなんだよ、そんなにカッカして」
「見てよ、この障子を!」
鼻息荒くした私が指差す先には、派手にぶち破られた数個の穴。
そこに目線を送った幸はぷっ、と吹き出した。
「元気がある証拠だって。また貼り替えればいーじゃねぇか」とかなんとか言って叱るどころか双子と一緒に呑気に笑ってる。
こないだせっせと貼り替えたのは私なんですけど。
ムッとしていると、
姉達に圧倒され一歩出遅れていた弁丸がおずおずと幸の方へ歩いていく。
「お、……おかえりなさい、父上」
「おー。ただいま、弁丸」
「父上ぇ……!」
手を差し伸べて待つ幸の姿に、ぱぁぁ、と表情に花が咲く弁丸。
喜んでその手まで足を早めたーーーの、だが。
「「父上、抱っこー!」」
双子が横から幸の両手を奪い取って抱っこだのおんぶだのと騒ぎ出し、
二人に押し飛ばされた弁丸は尻餅をついて呆然としていたが、次第にまたベソをかき始めた。…………
ああ………もう!
「ほら、楓と紅葉はいっつもこんな調子で弁丸を泣かせて全然優しくしてあげようとしないんだよ!ちゃんと幸からガツンと言ってやって!」
私がいくら注意しても効かない時は、幸の出番。
って、夫婦で決めてあるからね。
流石に幸の顔から笑みが消え、双子を見据える。
事態を察した二人は焦って父親の前に並び、
姿勢を正した。