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【イケメン戦国】戦国舞花録

第17章 ユー・セイド・“グッド”




子ども達は日頃から、暇さえあれば“合戦ごっこ”なる遊びを繰り広げ、外だろうが城内だろうが場所を選ばず騒いでいるのだ。

気の強い楓・紅葉のパワーに圧されて、比較的大人しい弁丸はいつも泣きながら私に助けを求めてくるーーーそれがほぼ日常化していた。


「母上ぇ……」


しゃくりあげ涙目で見上げてくるその風貌。
ぷくっと丸い頬に、薄茶の瞳。
まるで幸を小型にしたような弁丸。

甘えん坊の泣き虫だった。


「大丈夫だよ、この母上がしーっかり叱っておくからね」

「……うん。母上、大好き」


縁側によじ登って、私の腿の上に跨りぎゅう、と抱き締めてくる。
あまりの可愛さに抱きしめ返すと弁丸は嬉しそうに笑っていた。

はぁ……。ほんっっとに可愛い。
笑った顔も幸そっくりだ。

小さな頭を撫でて浸っていると、いつの間にやら座敷で取っ組み合いを始めていた双子の騒ぐ物音に気付き、そちらに目をやる。


「おりゃー!参ったか!」
「まだまだ!」


栗色の長い髪を振り乱し、交互に馬乗りになって相手を叩いたりつねったりしている。

見た目は私に瓜二つの長女と次女。
いや、見た目だけじゃないかも………

そう思い引き攣りつつも、二人を止めようと腰を上げた瞬間ーーー


バリン、と小気味のよい破裂音。


楓が打った正拳突きが、障子の紙を通り抜けていた。
かわした紅葉がすかさず横蹴りを入れ、
再び取っ組み合う。
暴れてる双子の足が当たり、次々と穴が増えていく障子。ーーー


………ちょっとちょっと………
こないだ貼り替えたばっかりなのにー!!


「こらっ!やめなさい!」


慌ててそばまで行き、互いを引き離そうとするが激しく抵抗して喚き散らす始末だ。
注意など聞く耳持たずで、相手を攻撃する事に必死。
弁丸は私の背中にぴっとりくっついたまま、姉達の様子を不安げに覗いている。


「いい加減にしなさい!!なんでそんなに煩いのあんた達はー!!」


言う事をきかない娘達に痺れを切らし、わなわなと怒りで震え思わず怒鳴るとーーー
奥の間の襖がスッと開いた。


「………お前の方が煩い」



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