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【イケメン戦国】戦国舞花録

第16章 ライジング・サン





その感覚が衝撃的で………
思考が停止し、ぼぉっと立ち尽くしていると
くるまれた我が子が泣き喚きながら動かしている手に目が行った。

紅葉よりも小さな手の平。

つん、と指先で触れてみると
ぎゅ、と握ってくる。

俺の人差し指にしがみついた細く弱々しい見た目の五本の指。そこから感じる、
ささやかな力強さーーー。


「ーーー………っ」


くるりと桜子に背を向ける。

堪えていたものが、危うくこいつの前で出そうになったから。


「ねぇ、どうしたの………?」

「……………」


背後から尋ねられるが、
答えられる訳が無ぇ。
振り向ける訳も無ぇ。



俺は今、泣いているのだから。



頬に熱いものが止めどなく伝う。



この感情を何と表せば良いのか。・・・・・



ーーー言葉に、ならない。



軽いようでいて、重みのある存在。

高らかな生命の産声に、

底知れぬ愛おしさが湧き上がる。



「……ねぇ?」

「…………」

「そのままでいいから、聞いて?」

「…………」


肩を震わせている俺の後ろ姿を見て、どうやら桜子は察しているみたいだ。
バレていようが、女の前で泣き顔なんて曝せるか。
男の沽券に関わ………


「私、幸せ」


る・・・・・ーーー


つらつらと心の内で呟いていた体裁を保つ為の意地が弾け飛ぶ。
恥をかなぐり捨ててでも、
振り向かずにはいられなかった。


顔を向き合わせると、桜子は一つ間を置いてーーー



「私、幸せだよ」



ーーー・・・・・



もう一度そう言った彼女の笑顔は、


この世で一番綺麗なんじゃないかと思う程


俺を魅了し、更なる至福へと導いていったのだ・・・・・。



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