第16章 ライジング・サン
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それからーーー
我慢の限界に達した残りの三人が我先にと産室に乱入し、代わるがわる子を抱いていた。
名前は何と付けようか、なんて
特に乗り気な信玄様が早くもいくつか案を出していた。
皆で満ち足りたひとときを過ごし、
程なくして
桜子は安静を取るべく産室に残り
その間子ども達は一旦別室へ移し佳世が世話をする事になった。
俺がやる、と買って出たのだが
「ひとまず寝て下さい」と却下された。
ああ、既に夜が明けていたのかーーー
産室を後にし、男四人でぞろぞろと歩く廊下の途中にある障子から光が差しているのを目にして、ようやくそう気付いた。
「いやー可愛かったなぁ、将来が楽しみだ。絶対に懐かせてやろう」
うきうきと成長後の容姿を思い浮かべる信玄様を尻目に謙信様がフン、と鼻を鳴らす。
「彼奴等が懐くのは俺だ。剣術の師となるこの俺を慕うに決まっておろう」
バチバチと火花を散らす二人を
佐助が冷静に宥めるも、「彼女達が懐くのは身近な俺なんじゃないかな」とさり気なく主張していた。
父親である俺を無視して、娘を巡り三つ巴の争いが勃発してしまい
苦笑いしつつ、外の空気を吸おうと障子を引いた。
霜月のひやりとした風が身を掠めるーーー。
青に黒みが混じった早朝の空。
暗がりに漂う雲と共に、光に放射された部分が稲穂のような黄金色に輝き・・・・・
信濃の山々の向こうから顔を出し
新しく始まる第一日目を照らす朝日が、
今ーーー昇っていく。
完