第16章 ライジング・サン
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赤子の叫びと女中等の喜ぶ口振りに、
桜子は無事だったんだ、そして無事に産まれたんだ………と安堵していると
佳世の厚意により入室する事が許され、
敷居を跨いで産室内へ一歩踏み込んだ・・・・・。
見ると、
ひっつめた髪は乱れ汗が滲み……グッタリと疲弊しているのにも関わらず穏やかな笑みで子を抱く桜子が座っていてーーー
俺に気付き、背もたれから上体を起こした。
急いでそばに行き、横から包むように抱き締め首元に顔を埋めると、大好きな匂いが自分を安心させてくれた。
「頑張ったな、桜子……」
何事も無くて、良かった……
本当に良かった……。
腕を回している着物の袖には彼女の目から流れているのであろう雫がポタポタと落ちる感触があり、「うん」と涙声の返事が耳中に通った。
「ほら、この子達も頑張って出て来たんだよ。双子の女の子」
ハッと我に返る。
そう促された先にはーーー・・・・・
初めて対面する、二人の娘。
桜子の腕の中に居る方と、
女中が抱えている方。
・・・・・
交互に視線をあっちにやりこっちにやりしている俺を見て、
「幸はあの子を抱いてあげて」
そうクスッと笑い桜子が手招きで女中をこちらに呼び寄せる。
「首をしっかり支えてあげて下さいね」
と、
ふわりと手渡され・・・・・
心許無い俺の腕の中にすっぽり収まった、小さな生命。
なんだか、不思議なような、
くすぐったいような、
未知の感覚だった。