第16章 ライジング・サン
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ーーー産室内ーーー
「はぁ……はぁ……」
荒ぶっていた呼吸が収まり始め、
意識が段々はっきりとし、霞んでいた視界が晴れてくる。
全身汗ばんだ肌に、白無垢の下に着ている襦袢がベットリと貼り付いて気持ちが悪い。
叫び続けたせいか喉はカラカラだ。
「頑張りましたね、奥方様」
私の下腹部の処理をしている周りの女中達に口々に称えられ、フラつく頭でなんとか頷く。
天井からぶら下がった子安縄を握る手の平の皮がめくれて痛い。いきむ度に強く引いていたせいだろうか。
ーーーでも、そんな痛みなんか今はどうでもいい。
極限状態のなか耳に響いた産声、
取り上げられた生まれたての小さな身体。
私と幸のーーー・・・・・
「赤ちゃん……どこ……?」
微かに泣き声がどこからか聞こえるのに………
きょろきょろと見渡すが産室内には居ない。
早くこの手で抱きたいのに………!
「奥の間で産湯に浸からせております。さぁ、こちらにお座り下さい」
後処理が済み、産椅へ誘導されそこに腰を下ろす。
現代と違って、横になってはいけないらしい。
拷問だなぁと思いつつも言われた通りにしていると
奥の間の戸が静かに開いた。
「奥方様、姫君様を清めて参りましたよ」
佳世さんと、補助をしていた女中に抱かれた
布裂にくるまれた二人の赤子。
産み落とした直後、朦朧とする私に誰かが言ってた。
“可愛らしい双子の姫君様でございます!”
ーーー・・・・・
疲労した腕を震わせながら伸ばす。
まずは片方の子をゆっくりと手渡され………
腕の中に抱いた瞬間、目に溜まっていた涙が縁からこぼれ落ちた。