第4章 『旋風』
激しく打ち合う音と、地を擦る音。
熱戦ぶりに、時折立ち止まって見る者もいた。
「……………っ!」
しばらく続いた攻防の中、出した一手を謙信に止められそのまま弾かれた。
態勢を崩し片手を地に着く。
「くそっ…………もう一回!!」
「懲りん奴だ」
これで何回目の挑戦なのか。
あともう少しのところでやられてしまう。
幸といい謙信様といい、上級レベルの……しかも真剣で実践を重ねてる男は格が違う。
でも、負けたくない
「お前は己の速さに頼り過ぎだ」
「これが持ち味だからね!」
二本の竹刀がお互いを狙い合い、間合いを取りながらそれぞれ足捌きを駆使する。
こんなに我武者羅に剣道に取り組んだのは、高校以来かもしれない。
(…………楽しい………!)
やはり改めて私は剣術が好きだ。この人もそうなのだろう。目が、愉しそうだ
「っあ…………」
そのうち、また制されてしまい横倒しに身体が地面に叩き付けられると砂埃が舞いあがった。
トントン、と反対の掌に竹刀を弾ませた謙信が歩み寄る。
「互角の速さの相手と対峙した場合、あとは押し切る力と気力がものを言う。………まぁ女にしては上等だが」
「悔しい………っ!まだまだ!」
「引く事を知らんな、お前は。………………」
ピタリと止まると、屈んで私の胴体を腕で包んだ。
「なっ!?」
視界がグンと高くなる。
肩に担がれているのだと理解するのに何秒かかかった。
「ちょっ………何すんの!?米俵じゃないんだから……っ」
「米俵の方が幾分かマシだ」
言い合いながらスタスタとどこかに進む謙信に、桜子は不安を覚える。
(なに考えてんのこの人!?私どこに連れて行かれるの!??)
「着いたぞ」
畳の上に転がされ、履いていたスニーカーはどこかにぶん投げられた。
見渡すと、飾り気の無い簡素な一室だった
「ここは………?」
「本丸。…………俺の部屋だ」