第16章 ライジング・サン
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皆との久々の再会に心躍らせ会話を弾ませているうちにあっという間に
とっぷり日も暮れて、
上田城の広間では歓迎の宴が開かれていたーーー。
「いいか、具合が悪くなったらすぐ言えよ?」
「うん。」
「勿論酒は駄目だぞ」
「うん。分かってるよ」
くどくどと言い聞かせてくる幸の正面で一回一回頷きながら、私はそばに敷かれた布団をチラッと一瞥した。
酔っ払う者達が集う酒の席に妊婦の私を置いておくのがよっぽど気掛かりなのか、「部屋で寝てろ」と先刻まで指示されていたのだが
春日山の皆が折角来てくれているのだからどうしても宴に出たいと説得し、
今に至るんだけれどもーーー。
がやがやと賑わう広間の一角に場違いな一組の布団。
いつでも私が横になれるようにと、幸の配慮によるものだった。
「話には聞いてたが……成程な」
「でしょう?あの見事な過保護。」
遠巻きから謙信と佐助がヒソヒソと小声で交わしている視線の先には………
桜子の脚を自分の胡座の上に乗せて足袋を履かせている幸村の姿があった。
夜は冷えるから、と重ね履きさせているのだ。
付近には桜子専用の火鉢を設置し、
膝掛けも用意してある。
食事や酒もそっちのけで桜子の動向に注意を払っていた。
家臣等や女中等は見慣れているせいか動じる者は誰も居ない。
「ありがとね、幸。でも……なんか一部から注目浴びてるしもう私のお世話しなくても大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃねぇんだよ。何かあったらどうすんだ」
お決まりの台詞を口にしながら私の打掛けの衿を直し、下半身を覆うように丁寧に膝掛けをかけている。