第16章 ライジング・サン
村正と離れたくなかった私の我儘で信濃に連れてきてしまい、城の庭先で放し飼いしている。
と言っても山へも自由に行き来しているのだが、幸が作った小屋がお気に入りみたいで大体ここに居る事が多いのだ。
そんな村正もいつの間にかパートナーを見つけて数ヶ月前に三匹の仔犬が産まれた。
「可愛い〜!」
腿の上でよちよちと動きつぶらな瞳で見つめてくる。毛がふわふわで柔らかい手触り。
村正のミニチュア版。
「ころっころだなー、こいつら。………それにしても村正。てめぇ俺より先越しやがって」
仔犬と遊びながら幸が冗談半分に睨むが、当の村正は澄まし顔だ。
「あははっ、村正と張り合わないでよー。私達の子ももうすぐで出てくるんだから」
「……だな」
そう目尻を下げてしゃがむと、私の元から仔犬をそっと降ろし膨らんだお腹に腕を回した。
「早く会いてぇな……。無事に産まれるなら男でも女でもどっちでもいい」
瞼を閉じて頬を寄せる幸を見下ろしていると、愛しさが込み上げその頭を撫でた。
大切な、愛する人。
彼と私の子がこの中にいる………
妊娠してからお腹の大きさが変化していく日々に不思議な感覚と幸せで一杯だった。
そして隣にはいつもあなたが見守っているの。
ーーー待ってるから、安心して出ておいで。
まだ見ぬ子に再度語り掛け、自分のお腹をさすり私も目を閉じた。
はらりはらりと秋色の葉が舞い落ちるなか、
のどかにゆるやかに、穏やかな時間が流れていく・・・・
そうしていると、懐かしい大好きな人達の声が耳に届いた。