第16章 ライジング・サン
ーーーーーーーーー
「駄目だ」
「やだ!行きたい!」
「駄目なもんは駄目だ」
朝餉を終え、せがむ桜子の行く手を阻んでいる幸村は腕を組み、襖の前に立ちはだかっていた。
「ケチー!」
「ケチで結構。何かあったらどうすんだ」
近場でいいから遊びに行きたい、と揺すって頼むも、壁の如くびくともせず断固として意見を譲らない幸に、私はがっくりと肩を落とした。
ーーー幸は、私が妊娠していると判明するや否やとんでもなく過保護になったのだ。
休みの日は基本的に一日中傍を離れずにいるし
政務等で忙しくしていても、合間を縫って様子を見に来る。
彼の居ない時に城下を歩こうとすれば必ず護衛が付き、城内でも私を一人にしないようにと、侍女である佳世さんにひたすら監視させ、
湯浴みするのも厠へ用を足しに行くのも彼女が付きっきりだ。
そうしてお腹の膨らみが目立つにつれ過保護っぷりはどんどん過熱していき、
臨月に入ると遂には外出禁止令を言い渡された。
いつ産気付いても対応出来るように、城から出ない方がいいとの事だ。
“何かあったらどうすんだ”ーーー
幸の口から何度も聞かされた。
過敏になり過ぎだなぁと思う半面、私の身を案じてくれている優しさが嬉しいんだけどね。
「じゃあ、散歩で我慢する」
「……よし。」
了承した幸がようやく襖を開け、部屋の外へ出れた。
ーーー城の敷地内なら何かあっても、呼べばすぐに誰かが駆け付けてくれるので
身体を動かしたい時は
庭先で散歩をするのが常となっていた。