第15章 フレンドシップ・リレーション
大きく深呼吸をすると
引っ込めた手を急須に添え、湯呑に茶を注いでいく。
「………ねぇ、桜子さん。良い事教えてあげようか」
「え?」
「幸の奴、“付き合い始めた記念日”は忘れてても君の誕生日はちゃんと覚えてるんだよ」
湯呑を手渡し告げると、彼女の瞳が見開いた。
「四月でしょ?誕生日。その日に祝言挙げようと計画してるんだよ、密かに」
「う、そ………」
「本当。誰よりも桜子さんを想ってる。だからさ、許してあげなよ。今回の件は」
途端に涙目になり湯呑を持つ両手にぎゅう、と力を込めて震えていた。
「私……なにも知らずに怒ってばっかりで……」
「幸はたまに荒っぽい物の言い方するけど心根はすごく優しいんだよ。それは知ってるよね?」
「……っ、う、ん……」
涙が溢れ膝に突っ伏してしまった彼女を見やり、
「あ、でも俺が密告したってこと内緒にしててね。幸にシメられるの恐いから」と冗談混じりに言うと
面を上げ目をこすりクスッと笑っていた。
………バラしてごめん、幸。だけど桜子さんの悲しむ顔はこれ以上見たくなかったんだ。
ーーーそれから
程なくして泣き止んだと思いきやそわそわと何かを迷っている様だったので尋ねると、
幸に謝りに行こうかと思ったがまだ怒ってたらどうしよう
と、心配していた。
そんな心配は無用だよ。
だって修練を積んだ俺の耳には聞こえてる。
君の一番良い笑顔を引き出せる奴の足音が。