第15章 フレンドシップ・リレーション
「そんなもん、って言われた。下らない、って。はしゃいでた自分が馬鹿みたい」
三角座りで膝を抱え、悲しそうな表情をたたえる桜子さんに胸の奥が痛んだ。
………………………
幸、彼女にこんな顔をさせるな。
下らなかろうが可愛い望みくらい叶えてやれ。
ーーー豊かな現代から、不便で右も左も分からない戦国時代に来たこの子。
武将の正室として恥じぬように教養や字の読み書きを勉強し、日々必死になってる。
広間で読んでいた書物だってそうだ。
暇だから読んでいた訳じゃない。字を読む事に慣れる訓練としてだ。
どのページも散々めくった跡で皺になっていた。
努力してるんだ。
全ては、幸の為に・・・・。
「桜子さん………」
俺の声に、チラリとこちらを見上げる彼女は憂いを帯びていて、
適当に纏ったのであろう着崩れた浴衣と湯上がりの濡れた髪の毛を垂らし………
あまりにも艶っぽかった。
ーーー今まで、悩んだり泣いてる君を何度か見てきた。
その度に葛藤した。
この腕で抱き締めてあげたい、と。
癒やしてあげたい、と。
けど…………
その役目は、俺じゃない。
伸ばしかけた手をグッ、と引っ込める。
ーーー初めて出逢った日に思ったんだ。
可愛いな、って。
天使のような見た目なのに腕っぷしが強くてちょっとガサツで………
予測不能に振る舞う姿が、とても魅力的だった。
でも、
俺の親友も君を想ってた。
すぐ解ったよ。
ああ、幸が行くなら俺は退こう。
そう決断したんだ。
君と同じくらい、彼の事が大切だから。