第15章 フレンドシップ・リレーション
ーーー…………………… ………
「………っせぇな」
「………だよ!」
……………
煩い…………
微睡みの中、男女の言い争う声が耳に障る。
遠くの方から近付いて来ているようだ。
「そんな事でいちいち腹立ててんじゃねー!阿呆らしい」
「はぁ!?阿呆って何!?」
ーーーああ、すごく聞き覚えのある二つの声だ………
さっきまで一緒だったよな、確か………
足音まで煩い………
一体なん………
「佐助ぇぇ!」
間近で大声を出され、畳の上で横になっていた俺はビクンと覚醒した。
「聞いてよ!幸ってば非道いんだからっ!」
「……え?な、なんの騒ぎ……」
桜子さんにがくがくと肩を揺すられ、寝起きの重い身体を起こし眼鏡を整えると幸が間に入ってきた。
「佐助を巻き込むなっ!お前は佐助に何でも頼り過ぎだ!」
「いーじゃん佐助は優しいもん!幸と違って!」
「あぁ!?ふざけんなよ、俺のどこが優しくねぇんだよ!」
ーーーつい先程まで仲睦まじかったというのに、
湯殿で何があったっていうんだ………。
ぎゃあぎゃあと喚く二人に圧倒されつつもなんとか宥めようとしていると、桜子さんが俺の片腕を引っ張り、何処かへ連行しようとするも
幸も負けじともう片腕を力強く引く。
「ちょっと!私は佐助に話聞いて貰うんだからそっちの腕放してよ!」
「うっせ馬鹿!佐助は俺と話すんだ。お前こそその腕放せっ」
「阿呆だの馬鹿だの言わないでよっ!ぜーったい放さないかんね!」
ぐぐぐ、と両方から腕を綱引きのように引っ張られ
俺は痛さと煩ささで項垂れていた。
腕が………
腕が、抜け る………
そうこうしているうちに、このままでは収拾がつかないと踏んだ幸がパッと手を離し背を向けた。
「……勝手にしろっ」
そう言い残し、ずんずんと広間から立ち去っていく。
その後ろ姿に舌を出して追い払う仕草をする桜子さん。
はぁ……。
仲は深まったとはいえ、このような争い……というか痴話喧嘩は定期的に勃発している。
二人らしいっちゃ、らしいのだが………。
仕方がない。理由を聞いてみるしかなさそうだ。