第4章 『旋風』
「…………信玄様」
さっきまで自分がいた縁側に座っている、広い背中に声をかける。
「天女」
いつものように、優しい笑顔で振り返る信玄には病の陰りなど一切見当たらない。
「あの…………暴力ふるってごめんなさい…………これ、良かったら………」
「はは、いいんだ。気にするんじゃない。…………ん?この茶色い固形物はなんだ?」
「現代の甘味です。チョコレートっていうんだよ。」
一口サイズで包装されているそれを食べた信玄は「美味い」と感激していた。
(良かった。喜んで貰えて)
空気が和み出したと思いきや、頬に大きい手を添えられる。
「嬉しいよ……。君も甘そうな味がしそうだね。お返しに口付けを………ぶっ」
迫り来る顔面にバチンと張り手をかました。
「て……天女、言ってるそばから暴力ふるうとは……」
「時と場合によります。」
まったく、歯の浮くような台詞ばっかり言ってるんだから。
まだ知り合ったばかりだけど、一日でも多く長生きして欲しい。そう思った