第14章 マイ・ガール ※R-18
ふっ、と暴れるのをやめ、身体の力が抜けていく桜子から口を離すと、何度もぱちぱちと瞬きをして俺を凝視していた。
「……ここに来る前、佐助から聞いた。俺が別れ話すると思ってたんだって?」
「………」
「馬鹿じゃねーのか、お前」
「なっ…!だって……態度おかしかったもん!もう飽きられてるのかなって……」
「逆」
抱き締めていた腕を強め、桜子の首元に顔を埋めた。
「好き過ぎて……お前の過去に嫉妬してたんだ」
「……過、去……」
……………………
辿々しく、けど包み隠さず打ち明け始めた
立ち聞きしてしまった事、
心の奥に仕舞っていた嫉妬心、
……八重との事も。
俺だけ自分の過去を隠すのは、狡いと思ったから。
どんな反応をするのか懸念していたが、桜子はうんうん、と相槌を打ちながら俺の背中や頭をさすっていた。
その手からは、慈愛にも似たような深い温かさを確と感じたんだ。
ついでに信玄様が画策した一件も暴露してやったら先程の珍妙な状況にやっと合点がいったようで、吹き出していた。
「ふふ、それにしても幸は焼きもち焼きだね」
「うるせー」
「……でもね、私も佐助に聞き出そうとした事あるんだよ。幸と恋仲だった子の話。だから、私もおんなじ。好き過ぎて気になっちゃうんだよ」
愛らしく微笑むと俺をやんわり引き剥がし、くるりと背を向けた。
「帯……外して?」
「桜子……」
「ね、早く」
ごく、と喉を鳴らし
帯に指を掛け…………
畳には外れていく帯が垂れていき
衣擦れの音と共に己の熱も高まって
襦袢がパサリと落下すると、桜子はこちらに向き直った。
行灯の光がぼんやりと白肌を照らす。
美麗な曲線を描いた、欲望を煽る肢体。
「私の頭から爪先まで……心も……全部、幸だけのものなんだよ」
一歩、前に近付き俺の腰帯に手を添えた
「……確かめて」