第14章 マイ・ガール ※R-18
スッパァン!、と、弾け飛びそうな勢いで襖が開かれ
鬼気迫る形相で現れた幸村に桜子は固まった。
ーーーが、幸村もまた目に入った光景に固まっていた。
室内には、胡座を掻き頬杖をついた謙信様と、跳ね回る数羽の兎。
そのうちの一羽を抱き上げ頬擦りし毛の感触を堪能する桜子。
なんともほのぼのとした一幕………
「………………」
なんだ、これ…………
緊張の糸が途切れた俺は肩を落とし額に手を当てた。
すると、謙信様はすくっと立ち上がり桜子から兎を奪いこちらを指した
「おい小娘、これが“飽きてる男”のする事か?戯言を抜かすな」
「……えっ……?」
「毎日のように妙な空気を醸し出されては敵わん。今日中に片をつけろ」
「え、え?あ、待ってよ………っ」
状況をいまいち把握出来ていない桜子を無視し、謙信様はずんずんと呆けている俺の方までやって来てすれ違いざまに一旦足を止めた
「信玄に言っておけ。茶番に付き合うのはこれっきりだ、と。」
それだけ残し、ぞろぞろと列をなす兎達を連れピシャリと襖を閉めていった。
……………………
ん……?
あれ……
これって……
つまり……
は……謀られた……!
あんな大真面目に教訓めいた事を語っておいて……
なにが“謙信は天女の事を……”だっ!
はっ!待てよ、さては佐助も共犯……!?
下手な芝居しやがって……ぜってー後でシメる!そして信玄様には甘味禁止令を出してやる!
怒りでぶるぷると震えていると、こそっと部屋から抜け出そうとする桜子が襖に手を掛けたので咄嗟に前方を阻み、掴み上げた。
「やっ!」
「どこ行くんだよ」
「どこだっていいでしょ!幸の話なんか聞きたくないから!」
振り解くと、次は部屋の隅へ逃げていこうとする。
あー……もう!
「大人しく俺の話を聞け!!!」
喚いて逃げ惑う桜子を捕まえ胸元に引き寄せると、その小煩い唇を乱暴に塞いだ。