第14章 マイ・ガール ※R-18
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ドタドタと騒々しい足音が曲がり角の向こうへ去っていく。
一人が欠けた縁側ーーー
信玄が羊羹を呑気に咀嚼しているその隣では、柱に背をもたれる佐助がふぅ………、と息を吐き疲弊していた。
「………責任とって下さいよ、信玄様」
「ははっ、血の雨が降るかなー?」
「…………」
「冗談だよ。まぁ今日中にはなんとかなるだろうし、俺は今のうちに甘味を食い溜めしとかないとなぁ」
皿にあった羊羹をぺろりと平らげ朗らかに笑う“主犯格”に、佐助は呆れながらも幸村が残した猪口に手を伸ばし一口飲んだ。
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『“当たり前”を粗末にしていては後悔する』
桜子の過去に固執して、
一番大事な日常の平穏をないがしろにしていた。
あいつを失うくらいなら昔の男なんてもうどうでもいい。
寝衣の裾をなびかせ裸足で城内を駆ける俺に女中が驚いて端に避ける。
それに目もくれず進み続け、
廊下を道なりに行きーーー
ーーー………!
「………ふふっ、やだぁ、もぉ………」
……………
桜子の部屋の前に着くなり、中からの彼女の嬉しげな小声が鼓膜を掠めた。
「はぁ……気持ちいい……」
「そんなに良いのか。」
「うん………」
戦慄、した。
八重の話題を出された時の冷や汗とはまた違ったものが、背筋をつぅー……、と伝う。
心ノ蔵がどくどくと振動し皮膚を突き破りそうだ。
気が、狂う………………
嘘だ、
嘘だ。
………やめろ!
「桜子!!!」
襖の引手を力一杯、真横へ滑らせた