第14章 マイ・ガール ※R-18
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ガコッ、と鍛錬場の地面に木刀が放られ
砂埃が上がる。
幸村は前屈みで激しく呼吸を繰り返し、ポタポタと汗が落下していくのをただ見つめていた。
同じく鍛錬していた家臣が、横から手拭いを寄越す。
「幸村様、今日は荒れてますね」
「………気のせいだろ」
片手で無造作に受け取ると、額にこすり付け大きく息を吐いた。
ーーーいつもなら、桜子が用意してくれていた。
鍛錬場の隅にござを敷き、手拭いを握り締めて座って待っていた。
“私も一緒にやる!”とか我儘言いながら。
今日は居る筈もないのに、その場所に目をやる。流れてきた汗が入り、視界が滲んだ。
…………話が、したい。
全部話して、早く笑顔が見たい。
嫉妬はあれど、今は桜子が恋しくて仕方が無い。
周囲の家臣等が談笑しながら移動するなか、幸村は口を閉ざしつつ
井戸へ着くと桶に汲んだ水を思い切り頭からかけた。
…………出掛けるっつってたな。
そろそろ帰ってきてるんだろうか。
会いたい。
びしょ濡れの髪を振り散らすと、
自室もしくは日頃気に入っている縁側に彼女が居るのでは、と歩き出し…………
縁側に面した庭先に差し掛かった、時。
無邪気な笑い声が耳に届き、その先には
欲しかった桜子の笑顔が、謙信様に向けられていたのが見えた