第14章 マイ・ガール ※R-18
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背中を西日が照りつけ、髪飾りに光が反射している。
庭石に腰掛ける桜子は自分の影だけを無意味に眺めていた。
ーーー出掛ける予定なんか無かった。
しかし幸にそう言った手前、午前中から外出し村正と遊んだり城下をぶらついたりで時間を潰した。
やがてそれも尽き、やむを得ず城に帰ってきたのだ。
溜め息をつき項垂れていると、もう一つ影が増えていた。
「辛気臭い面だな」
見上げると、謙信様が気配無く傍らに来ていた。
色素の薄い髪に日差しが透けて綺麗だった。
すると、
ゆらりとした動作で竹刀を預けてきたので首を振った。
「………そんな気分じゃないんです」
「どんな気分だろうが付き合え」
強引に私の手の中に竹刀を握らせ、障害物の無い敷地面へスタスタと一人で歩いていく。
「ちょっ、ちょっと!」
立ち上がり追い掛けようと走り出した途端、つまづいてうつ伏せに倒れてしまった。
音に反応した謙信様が駆け寄って抱き起こしてくれたが、転んだ拍子に強く打った膝が痛んでその場にへたり込んだ。
瞬時にその状況を理解したのか、私の身体を担ごうとしたのでまた首を振った
「赤べこのようだな、お前は。一旦中へ入り具合を診ねば」
「………まだ城の中へは戻りたくない」
「何故に」
「………色々あって。……あの……謙信は、恋仲の女の人に飽きた事はありますか……?」
唐突な質問に、謙信様は左右異なる色をした目を丸くした。
「俺は、飽きる事など無い。飽きるような女は選ばない。…………まぁ世の男共の中にはそのような性分の奴も居るだろう」
「そう……ですか」