第14章 マイ・ガール ※R-18
ーーーーーーーーーーーー
朝起床すると、桜子は褥から消えていた。
あいつが俺より先に起きるなんて稀だ。
空っぽになった薄暗い隣の空間ーーー
彼女が寝ていた場所の敷布には小さく皺の跡がありそこに頬を寄せると好きな香りが鼻から体内へ流れてくる。
「桜子…………」
ーーー泣きそうな顔、してた。
昨夜は流石に言い過ぎた。怒鳴る事なかったんだ。こんな態度ばかり取ってる俺が悪いのに。
嫉妬が渦巻いてどうしようもない。自然と桜子に辛く当たってしまう。最低だ、俺は。
のろのろと褥から抜け出し、身支度を整え広間へ足を運び今日も朝餉と向き合う。珍しくきちんと正座した桜子は、生気の無い顔つきで終始視線を下げ物静かに飯を口にしていた。
…………こんな姿、見たくない。
姿勢を崩してはつらつと美味そうに食う姿が好きなんだ。わびしく食事するなんてこいつに似合わねぇ。
…………そうさせたのは、紛れもなく俺だ。
このままだとどんどんと悪い方向へいく。
愛してるからこその嫉妬は度を過ぎると関係が破綻する。本末転倒だ。
そんなのは絶対に御免だ。……本音を素直に話さなければ……
中途半端に食べ残し、そそくさと広間から出ていく桜子を足早に追った。
まるで昨日と逆だ。
「待て」
「どしたの………?」
「昨夜は……悪かった。本当にごめん……」
「ああ……うん。気にしてないから……」
「俺、お前に話があっ……」
「悪いけど私これから出掛けるの。幸も忙しいでしょ?また今度にして」
表情を変えず、ふいっと去っていく後ろ姿にとてつもない不安が生じる。槍で突かれたように心臓が痛い。
あいつも、こんな気持ちだったんだろうか。
俺が、ずっとこんな気持ちにさせていたんだ。