第14章 マイ・ガール ※R-18
朝餉は、味気無かった。
箸が進まない俺の隣では、通常と変わらず桜子がもりもりと美味しそうに食事をしている中、時折心配そうに「調子悪いの?」と尋ねてきたが否定しておいた。
政務中も「覇気が無い」と信玄様に注意された。
謙信様は、また色惚けのせいだと思い込んでいるのか我関せずといった感じだ。
午後の休憩中に、まだ疑ってる佐助から昨夜何かあったのか聞かれたが、「別に」と答えた。
相談する前に、自力で消化したかったのだ。
ーーーそんな冴えない一日を締め括る夜、
今朝約束した通り俺の部屋に訪れた桜子と褥の狭間で抱き合っていた、のだが。
口付けを交わし
さぁこれから、という時なのに
次へ行動を移せずにいた。
「………どうしたの?」
そう問う桜子の血色の良い唇を、指先でなぞると捲れた隙間から舌が見えた
記憶に新しい彼女との情事が浮かぶ。
……………この舌の動かし方は、どうやって覚えたんだろう
指先を唇から腰の辺りへ這わせていく。
……………この腰使いは誰に習った?
艷やかな色声
惑わすような目線
虜にさせる甘美な内部
俺以外の男と
どんな過程を経て培ってきた?
なあ……………
滑らかな白肌を撫でながら、
困惑する桜子の豊かな胸元に突っ伏した。
そんな思いを巡らせたとてどうしようもない事なのに、やりきれない気持ちと
どす黒い嫉妬心が頭をもたげる
「今日は、やめとく………」
そう告げると、
桜子にそっと寝衣を着せた
らしくない俺の雰囲気に対して疑問を投げてきたが、
「少し、疲れてるんだ」
と、返事をして自分も寝衣に袖を通し
横になった
納得がいかない面持ちで無言で仰向けに寝ていた桜子から、大分経った後ようやく寝息が聞こえ…………
俺も、瞼に腕を乗せ覚醒している脳をなんとか眠らせようと藻掻いていた
ーーーそんな、夜だった。