第14章 マイ・ガール ※R-18
「おはよっ、幸!」
翌朝…………
腹なんか減っていなかったが、習慣的に朝餉を摂りに広間へ向かう途中ーーー
自分とは真逆の、屈託の無い笑顔が飛び込んできた
「……はよ」
あまりにも眩しく見えて伏し目がちに挨拶すると、桜子が不思議そうにジッと覗く。
「どうしたの?元気ないね」
「どうもしねーよ」
「そう………?」
「そう。」
「そっか………あ、今夜は一緒に寝れるよ!今日はどっちの部屋にしようかなぁ……うーんと……、幸の部屋に行こっかなぁ」
俺が複雑な胸中だとは露知らず、うきうきとはしゃぐ姿に空虚感が募る。
桜子が悪い訳じゃないのに。
自分が勝手に盗み聞きして勝手に嫉妬してるだけだ。
そうしていると、廊下の奥から歩いて来る佐助が手の平を左右に揺らしているのを察知し「おー。」とだけ反応しといた。
「おはよう、お二人さん。朝から寝床の相談なんてラブラブ一直線だね」
そう茶化されると桜子は恥ずかしげに挨拶を返し照れ隠しの足蹴りをすると、佐助が大袈裟に痛い素振りを演じていた。楽しそうだな、こいつら。
「元気だね、桜子さん。生姜湯が効いたのかな」
…………………
桜子が小首を傾げ、何かを言おうとしたがすかさず遮った
「あれ、やっぱ面倒臭かったからあのまま自分の部屋へ戻って寝ちまったんだよなー。俺酔ってたし」
「……へー。そう……なんだ?」
「そう。」
疑っているのか、俺の様子を伺う佐助と
何の事やら分かってない桜子の背中を押し
誤魔化しつつ広間へと向かった。